剱岳北方稜線周辺(富山) 細蔵山(1551m) 2018年10月21日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 5:54 駐車箇所−−6:02 早月川渡渉 6:09−−6:18 登山口−−7:39 細蔵山の大杉−−7:48 1234m峰−−8:12 1330m峰を巻く−−9:04 細蔵山(休憩) 9:21−−9:21 熊避け鈴紛失&操作 9:32−−10:03 1330m峰を巻く−−10:14 1230m峰東側で立ち話 10:51−−10:56 1234m峰−−11:29 登山口−−11:37 早月川渡渉 11:47−−11:52 駐車箇所

場所富山県中新川郡上市町
年月日2018年10月21日 日帰り
天候
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場河原の採石場付近の路側に駐車余地あり
登山道の有無一応ありだがかなり薄い(無い)箇所も。主稜線に乗ってからは登山道と言うより踏跡、獣道の表現が正しい。目印は多数あるので周囲をよく注意すること
籔の有無主稜線に乗ってからは体に触れる藪が激増する。1300m西側直下から1250m鞍部間は特に道が薄く、目印がある箇所でも道が無い区間がある。藪が薄い箇所を選びつつ稜線を外さないように注意
危険個所の有無無し
山頂の展望剱岳、立山方面に展望あり
GPSトラックログ
(GPX形式)
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コメント2000年代に開かれた登山道を往復。早月川右岸の登山口までのアプローチが悪いので対岸の県道に駐車して早月川を渡渉。この時期は水量低下で場所を選べば水面は膝下で長靴でも浸水しない。登山道は1234m峰までは明瞭だがその後は踏跡、獣道程度に薄くなり、特に1330m峰付近から1250m鞍部にかけてと山頂付近は道が判別不能箇所もある。1週間前に行方不明者が出て私の登山当日もまだ見つかっていないのは現地で初めて知った。笹や灌木のはみ出しが多く、朝露に濡れた時間帯には雨具必携。




県道路側、採石場入口前に駐車 採石場入口。ここからしか河原に降りられない
広い採石場 上流には白くなった剱岳
砂防ダム上流の川幅が広がった箇所で渡渉 長靴をデポ。右足が水没したが想定内
対岸には廃林道あり 目印があったので登山口と思ったが違った
台地に上がったが植林で道無し 河原に戻る
石の書かれた案内 目立つ2本の枯れ木。登山口はもっと上流
ケルン まだ登山口は先
この目印の先は藪で一度河原に降りる 草の凹みが登山道
草に隠れてペイントあり ロープで急斜面を登る
台地の標識。ここが尾根起点 標識横から尾根に取り付く道あり
白くなった劔御前 標高770m付近
標高830m付近 標高1180m付近
細蔵山の大杉分岐 木に隠れているが大杉出現

大杉。明らかにこれまでの杉よりでかい 1234m峰の杉
1330m峰手前の1310m付近。ここから道薄い 1330m峰東の標高1300m付近。道無し
1250m鞍部を越えると道が復活 1320m付近
1470m付近 1550m峰。ほぼ道無し
細蔵山山頂 三角点に見えるが?
細蔵山から見た剱岳 道を整備した形跡
登山口に戻る 渡渉しやすい場所へ河原を下流へ
木製の登山口案内標識があるのだが・・・ 薄っすらと雪化粧空いた剱岳
対岸の採石場。ここは水深があるのでさらに下流へ 軽トラが入っていた
デポした長靴 早月川上流を見る
帰りはここを渡渉 帰りは浸水せずに済んだ
懐かしの白ハゲ 駐車箇所。車が増えていた
対岸の駐車箇所。真ん中の車が遭難者のものらしい

 細蔵山に夏道があると知ったのはつい最近のこと。ただしネットの記録ではあまり明瞭な道ではなく藪が多いとのことで、残雪期の記録も多いことからそれは分かる。ただし薄くても道があるなら私としては問題なく、標高的には気温が下がった今の時期に登るのがちょうどいいだろう。先週の大熊山に近いこともあり、気持ち的にも手が出しやすい。

 ネットの記録では早月川右岸に林道があるとのことだが道の状態が悪く、さらには近年の豪雨で道が荒れて途中までしか車で入れないとのこと。しかし対岸には馬場島へ通じる立派な県道が通っていて、そちらに駐車して渡渉すれば最短距離の歩きで登山口に達することが可能だ。10月も中旬を過ぎれば通常の河川なら渇水期であり、雨の直後でなければ比較的容易に渡渉できるだろう。特に早月川は川幅が広いので水量の割には水深が浅く水の勢いも弱いと予想された。普通の長靴で浸水しない水深かは不明だが、冷たい水を裸足で歩くよりはかなりマシだろうと、久しぶりに長靴を車に積み込んだ。

 土曜日、大倉山から下山後に早月川の現場を視察。登山口の対岸、県道側は川砂利の採集場になっていて土曜日も重機が操業中。河原に降りられるのはこの入口のみで、他は県道から高さ数mのコンクリート法面が立ちはだかって、この近くで河原に容易に降りられそうな場所は無かった。操業が終わるのを待ってから河原に下って早月川の流れを確認。本来の流れは広いはずだが採石のために流れを河原の北端一か所にまとめているために工事現場近くは水深があり流れが速く、長靴では水没確実だった。それでも安全に渡れるレベルだったのでここを渡ってもよかったのだが、砂防ダムに近い下流では流れが広がっていて水深も浅く、長靴で水没せずに渡れそうな感触を得た。明日はここまで移動してから渡ることにして車に戻って寝た。この日は夕方から快晴になって放射冷却で冷え込んだ。こりゃ明日は藪が朝露で濡れているだろうなぁ・・・

 翌朝は明るくなってから長靴を履いて登山靴は手に持って出発。造成されて平坦な河原を下流に向かい、川幅が広がる砂防ダム手前で靴下を脱いで長靴で流れに突入。長靴の深さギリギリの水深だが水の勢い分だけ水面が上昇し、右足の1歩分だけで浸水したがこれは想定内。しかし水が冷たい! 対岸に上がって足をタオルで拭いて靴下を履いて登山靴へ履き替え、長靴は逆さにして日当たりがいい角度に設置してデポした。

 登山口はネットで事前に調査済み。まだ草の葉が茂った時期では事前に調べないとまず発見は不可能な状態だった。2本並んだ背の高い杉?の枯れ木がいい目印だが登山口はこれより上流にあり、石に書かれたペイントやケルンを辿り、それより上流が濃い藪に覆われたら石ゴロゴロの河原に一度下ってさらに上流に50mくらい進むとピンクリボンが下がった木があり、切り開きが急斜面の草むらに延びていた。フィックスロープがかかっているが近くまで行かないと草に隠れて見えない状態。枯れればはっきりと見えるようになるだろう。これで第一関門クリア。

 傾斜が緩むと台地状の平坦地で保安林の標識があり、この右を通過して斜面に続く道があった。最初だけ草っぽく見えるが僅かに上がると明瞭な道に変わり、想定よりもまともな道で驚いた。予想としては大熊山のレベルの道かと思ったらずっとマシで体に触れる藪は少なく、朝露対策のゴアのズボンは必要ないため途中で脱ぐ。気温は下がっているとは言っても、私にとっては長ズボンの上にゴアを履いた状態での登りでは汗だくになってしまうので大助かりだ。

 この尾根はかなりの傾斜で一気に標高を上げていく。大熊山のように杉の古木が点在し、ブナの紅葉も混じってなかなか雰囲気のいい尾根だった。樹林の切れ間から見える剱御前はうっすらと雪化粧。先週は真っ黒だったが、おそらく昨日の寒気による雨が稜線では雪になったのだろう。やはり雪が乗った姿の方が写真写りは断然いい。

 標高1190m肩にある微小ピークで「細蔵山の大杉」なる案内が左を指していたが道はなく、僅かに下って小鞍部で左に踏跡が分岐していた。それを進むとこれまた薄い踏跡が続き、最初の微小ピークを越えた先の緩斜面に大杉はあった。確かに見てすぐにこれまでの杉の古木とは一回りも二回りも太い幹回りで大杉の貫禄あり。東側には一回り細いがそれでもこれまでの杉より太い大木が立っていた。

 細蔵山登山道に戻って先に進む。今までより道は細くなり笹等のはみ出しが増えるが、まだ道は明瞭で迷う心配はない。1234m峰てっぺんには大きな杉が立っていた。標高1250m付近では左手の樹林が切れて展望が開けて尾根の先の様子が見えるが、見えているのは細蔵山山頂ではなくもっと先の大猫山から続く尾根のようだ。

 1330m峰が近づくと目印はあるのだが、それまであった踏跡が完全に消えてしまって密度の低い笹や幹が横に寝た灌木の中を進むようになる。これまでは尾根が比較的細くて尾根直上を歩いていることがはっきりと分かったが、道が薄まるのは尾根幅が広がってからで、どのくらい尾根直上からずれて歩いているのか判別不可能。右手(南側)の方が灌木が薄いのでそちらを伝ったりしたが外れすぎるとまずいので軌道修正したり。この区間だけは目印がある箇所が正しいルートなのか疑問であり、各自で歩きやすい場所を歩けばいいと思う。

 1250m鞍部まで下ると尾根が収束して幅が狭まり、再び道が明瞭化して面倒な灌木から解放される。しかし登りの傾斜はきつくなり体力を搾り取られる。左手斜面の傾斜はきつく転落注意。大きな杉は根元の左右を回り込んだりするが、基本的に尾根直上に踏跡程度の道が続いている。トラロープが張られた場所があったり、邪魔な太い枝が伐採されたりしているので過去に整備の手が入れられたのは間違いないが、毎年継続的に整備されているかは不明。まあ、個人や小規模な団体が登山道の維持にあたっている場合はそれを希望するのは無理と言うものだろう。笹はともかく邪魔な太い枝が払ってあるだけでもありがたく感謝すべきだろう。

 紅葉したブナの立木で目の保養をしながら高度を上げていき、山頂直下で尾根幅が広がると尾根直上から小さな谷地形に登山道が移る。下山時は危うくこの谷をそのまま下りそうになったが、他の人もここは引っ張り込まれやすい。踏跡程度の登山道よりも谷筋の方が明らかに藪が薄く道らしく見えるのだから。ここは直進しないようロープでも張るのがいいだろう。

 谷地形は尾根より南側を通っているが、途中で左斜面に道が移り、この辺から更に道が薄くなり笹を分けながら進んでいく。もう山頂の一角でなだらかな地形の真っただ中なので獣道も期待できない。笹の中で地形図に表現されない微小ピークが登場、ここが山頂かと思ったら山頂標識は無く、まだピンクリボンの目印が笹薮の中を先に続いているのでほぼ踏跡無しの藪に突入、谷地形の微小鞍部を通過し、笹薮の斜面を僅かに登り返して開けた空間に飛び出したら細蔵山山頂だった。

 木製の山頂標柱があったが明らかに獣に齧られた形跡が。標柱の根元には三角点にしか見えない標石があったが、地形図を見ると三角点は無いはずだ。面倒なので四方の側面を確認しなかったが主三角点だろうか。周囲は背の低い樹林だが剱岳方面だけは展望が開けていた。しかしこの時間はモロに逆光で残念な風景であった。

 道はまだ先に続いていてどこまであるのか確認しに行ってみたが、50mほど進んだところでぷっつりと途切れていた。山頂から行き止まりまでの間は東側に開けた地形で、休憩するなら山頂よりこちらの方が展望は良さそうだ。

 今日は昨日と打って変わっての快晴で日差しが気持ちよく、アップダウンの中を3時間ほど歩いたのと昨日の疲労もあって久しぶりに山頂で休憩。顔が日焼けしそうなほどの日当たりだった。まだ時刻は午前9時で周囲に人の気配はない。登ってくる途中で藪の中を逃げていく大型動物のガサゴソと藪を進む音は聞こえたが、おそらくカモシカだろう。湿った谷筋の土の上には新しいカモシカの足跡が残っていた。この山はあまりメジャーとはいいがたいので、好天の週末でもどれくらいの人が山に入るだろうか。もし登ってくるとしても山頂到着はお昼前後が普通だろうから、まだ2時間位先だろう。

 20分ほどの休憩で下山を開始したが、その直後にウェストポーチにぶら下げていた熊鈴と温度計が笹と灌木に絡まり、ポーチと繋ぐ金属製の輪が開いて藪の反動で飛ばされて行方不明に。さすがに鈴が無いとここはヤバいので捜索に入ったが、これが簡単に見つからない。間違いなく半径数mの範囲内にあるはずだが・・・。過去にも同様な落とし物の経験があるが、その時も発見にかなり手間取っている。それこそ地面を舐めるように何度も同じところを繰り返し探してやっと鈴を発見したが、同じ場所に取り付けていた温度計が見当たらない。温度計は無くなっても行動に支障はないが、何年も難関峰登頂のお供した物品だし、このまま諦めるとゴミになってしまうのでもう少し頑張ることに。鈴とほぼ同じ場所にあると予想したのだがどうしても見当たらず、何度か諦めかけてもういいやと歩きだし始めて最後の粘りで、鈴が落ちていた箇所より1,2m下った場所で無事に発見。どちらも目立たない色だが、何か目立つ色を塗った方がいいかなぁ。それよりも藪に引っ掛けても壊れない強度を持つものでポーチに接続した方がいいだろう。

 先述したが下山時は山頂部の浅い谷地形から尾根直上に乗り移る地点、標高1510m付近で谷を直進しそうになったが、往路でこんな急な谷を登ってきた記憶が無く尾根直上は明らかに左手にあるので、10歩ほど逆戻りして左に踏跡が無いか探したら無事に発見。ここはヤバかった。間違いなく他に人も間違いやすいだろう。

 1330m峰周辺は相変わらず道が分からず灌木藪が薄い箇所を適当に登っていく。反対側から鈴の音が聞こえているのだが、道が無い区間でお互いに別ルートを進んでいるのでその姿を見ることはできなかったのは残念。でも他に登山者がいることが分かって私の行動には無関係なのに何となく一安心。1330m峰を越えて目印を辿り下っていくと、そのうちにやっと踏跡が復活する。その後は道を外すことは無かった。

 1230m峰東直下で休憩中のご夫婦を発見。今日はここまでとのことで昼食中で、長々と立ち話に付き合っていただいた。当然だが富山県内在住とのことで、私が長野からやってきたと話したら驚いていた。わざわざ県外からやってきて登るような有名どころではないので、驚かれて当然だろう。さすがに富山県内の山に付いては詳しかったが、ろくでもないマイナーな藪山については私の方が詳しかった(笑)。それでもマイナーな山もいろいろと登られているとのことで話が盛り上がった。このHPの存在もお知らせしたので、富山近隣の藪山情報も含めて役立つかもしれない。GPSのログによると立ち話の時間は45分ほどであった。この間に単独男性が山頂方面へ上がっていった。

 ご夫婦との会話で、先週にこの山で遭難者(行方不明者)が出たことを知った。そういえば昨日に早川右岸の開けた場所にパトカー+1台が止まっているのが見えたが、パトカー隣の白い車が行方不明者の車だった様だ。帰宅後にネット検索したら記事があったが、残した車の中に細蔵山に行く旨を書いた紙が残されていたそうだ。昨日のパトカーはその捜索だったに違いない。今回私が歩いた感じでも迷いそうな場所は何か所もあり、一番間違いやすいのは山頂直下西側の鍋増谷に落ちる谷をそのまま直進するパターンだろう。無事に見つかってくれるといいが。

 下山再開してさらに下ると単独男性とすれ違ったすぐ後ろで5名ほどのパーティーとすれ違う。これで私を含めて本日の入山者は10名で予想以上に多かった。この後は人とうことはなく河原に到着。

 デポした長靴を回収しに下流へ移動すると、廃林道上に軽トラを発見。すれ違った5人パーティーに軽4輪に乗ってきた人か?と聞かれたが、この軽トラのことだったのか。普通車の通行は無理でも軽トラだとここまで可能らしい。  長靴を回収する際に往路の渡渉地点より上流で川幅が広くもっと水深が浅く流れが緩やかな場所を発見。こちらなら長靴の水没は無いかもしれないと長靴を持って上流へ移動、水没に備えて靴下を脱いで長靴に履き替えて流れの中へ。靴下は往路で藪の露に濡れて湿ったままなのでここで水没してもまあ良かったのだが。川の中心付近が一番水深が深いが、それでも往路より浅くて今度は水没せずに済んだ。

 土砂採集場はやはり日曜日は休業で重機は朝と同じまま静かだった。県道路側の駐車余地には車が1台増えていたが、たぶんすれ違った登山者の一人のものだろう。ということは残りは右岸の廃林道経由のはずで、さすがに渡渉を考えるのは少数派らしい。上流に見えている剱岳の雪化粧はまだ溶けておらず、3000m級の稜線では本格的な冬の訪れまでもうすぐのようだ。


まとめ  細蔵山は夏道は存在するが、主稜線に乗ってからは道は薄く踏跡〜獣道程度で、1330m峰付近は道型は無い。明らかに初心者向けではなく、山の経験が豊富な人でもまともな登山道がある山しか歩いていないベテラン登山者にも向かない山と言える。規模の小さな山道が無い、もしくは薄い山で藪山の勘を鍛錬してから挑戦した方がいいだろう。5月の残雪期の方が尾根幅が広く道が薄い箇所は雪の上を歩くことができ、ルートミスの可能性は低いように思える。危険個所は無いが迷いやすい場所は多く、お気軽に登れる山とは考えない方がいい。

 

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